『ウルトラセブン』と『ローマの休日』

ウルトラセブン・クラシック
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ダンとアンヌの別れによってクライマックスを迎える『ウルトラセブン』

『ウルトラセブン』が制作・放映されてから半世紀もの時を経てもなお私たちファンの心を捉え続け、高い評価を得続けることに最終回『史上最大の侵略』は非常に大きく貢献しているのではないかと思います。

『史上最大の侵略』は、地球人類のために戦い続けた英雄の地球での最後の戦いが描かれた物語であると同時に男と女の別離を描いた物語でもありました。

そして、なんといっても、『史上最大の侵略』を名作たらしめているのは、ダンとアンヌの別れのシーンですよね。

「アンヌ 僕は 僕はね 人間じゃないんだよ M78星雲から来たウルトラセブンなんだ」

というダンの告白から始まるダンとアンヌの別れのシーンは、『史上最大の侵略』だけではなく『ウルトラセブン』全体の格=グレードを確実にアップさせていたと思います。

満田監督が歌舞伎で使われる場面転換時に幕を落とす手法から着想を得たというシルエットによって構成させた斬新な画面、このシーンのために作られたのではないかと思いたくなるほどピタリとハマるシューマンのピアノ協奏曲イ短調、そしてウルトラセブンであること、別離の時がきていることを告白するダン……文句のつけよう・非の打ちどころがない、まさに名シーンです。

『ウルトラセブン』の物語は、このダンがアンヌにセブンであることを告白し、別れを告げるシーンでクライマックスを迎えたと言っていいと思います。

ダンとアンヌの別れとブラッドレーとアン王女の別れの共通点

シンクロする二つの永遠の名作の男女の別れ

男と女の別れがクライマックスとなっている物語は、幾千とあるのかもしれませんが……その一つに映画『ローマの休日』を挙げられます。

ローマの休日 (名作映画完全セリフ音声集スクリーンプレイ・シリーズ)
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私は、この『ローマの休日』の新聞記者と王女の別れと『ウルトラセブン』のダンとアンヌの別れにシンクロするものを感じます。

男に意外な正体を明かされても、なお女は…

●アンヌの場合

アンヌは、ダンにウルトラセブンであることを告白された時に「びっくりしただろう」とダンから訊かれると

「ううん 人間であろうと宇宙人であろうとダンはダンに変わりないじゃないの たとえウルトラセブンでも」

と応えています。

そして、いよいよダンが自分の前から去ろうとすると、アンヌはダンのウルトラアイを持った右手にすがりつき

「待って ダン 行かないで」

と言いながら、ダンが去って行くのを止めようとしています。

アンヌのダンへの感情は、ダンがウルトラセブンであることを知っても冷めはせず、むしろ予期せぬ突然の別れを告げられたことによって急激に燃え上がっていたのだと思います。

●アン王女の場合

『ローマの休日』のアン王女は、記者会見の場で自分と「休日」を過ごした男=ブラッドレーが実は新聞記者で、彼が自分が王女であることを知った上で「休日」をともに過ごしていたことを知ります。

しかし、それでもアン王女は、表敬訪問を行ったヨーロッパ各国の中でどこが最も印象に残ったかを問われると、「いずこの地もそれぞれに素晴らしく…」と模範解答的なことを最初は言いだしながら、結局

「ローマです この地を訪れたことは 生涯忘れ得ぬ思い出となるでしょう」

と言ってしまいます。

アン王女にとってローマでブラッドレーとともに過ごした時間は特別であり、そのことをブラッドレーに伝えるために彼女はこう言ったのです。

きっとアン王女にとってセールスマンであろうと新聞記者であろうとブラッドレーはブラッドレーに違いがなかったのでしょう。

別れというクライマックスを得たことによって『ウルトラセブン』と『ローマの休日』は永遠の名作になった

前述しましたように『ウルトラセブン』が未だに私たちファンの心を捉え続け、高い評価を得続けていることに最終回『史上最大の侵略』は非常に大きく貢献しているのではないかと思います。

もしも、最終回『史上最大の侵略』でダンとアンヌの別れがドラマチックに描ききられる事がなかったら、『ウルトラセブン』の評価は現在ほどは高くなっていなかったかもしれません。

『ローマの休日』は、本来交わるはずのなかったブラッドレーとアンのあらかじめ宿命づけられていた別れを感動的に描ききったことによって単なる夢物語に終わらずに永遠の名作となり得たのだ思いますが……『ウルトラセブン』もまたダンとアンヌの別れを感動的に描ききったことによって永遠の名作となったと言えるのではないでしょうか。

続けて作品世界多角的研究2 『いくつかの平行世界にそれぞれのウルトラセブンがいる!』のページをご覧ください

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