『ノンマルトの使者』の真市と『恐怖のルート87』のアキラ

ノンマルトの使者
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死んだはずの少年が登場する『ノンマルトの使者』と『恐怖のルート87』

ウルトラセブン』第42話『ノンマルトの使者』に登場する真市少年は、海に遊びに来ていたアンヌにシーホース号による海底開発実験をやめないと大変なことになると警告し、地球防衛軍極東基地にも電話を入れ「海底はノンマルトのものなんだ」「人間が海底を侵略したらノンマルトは断然戦うよ」「ねえ 長官にちゃんと伝えておくれよ 海底はノンマルトのものだから侵略したりすると大変なことが起きるよ」と話していました。

そして、この真市は2年前に亡くなった海が大好きな少年だった(らしい)ということが第42話『ノンマルトの使者』のラストでわかるわけですが……この真市少年と共通する要素を持っているのが『ウルトラマン』第20話『恐怖のルート87』に登場するムトウアキラ少年です。

真市がアンヌに海底開発実験をやめないと大変なことになると警告したようにムトウアキラは科学特捜隊本部に現れ、フジ・アキコに「大室公園の高原竜ヒドラが暴れるよ」「早くしないと大変なことになるよ」と警告しているのです。

このアキラは、大室公園の高原竜の像のデザイン公募が行われた際に応募し、そのデザインが採用された小学生でしたが……国道87号でトラックにひき逃げされて既に亡くなっていました。

そして、大室山から出現した高原竜の像にソックリな怪獣ヒドラは、トラックにひき逃げされて亡くなったアキラの復讐をするかのように国道87号で次々にトラックを襲います。

『恐怖のルート87』のアキラは『ノンマルトの使者』の真市の原型!?

恐怖のルート87
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真市とアキラには

●人間ではない存在と大きく関わっている

●大変な事が起こるのを事前に防衛チームの女性隊員に警告している

●実は既に亡くなっている少年

といった共通点を見出すことができます。

そして、もう一つ……金城哲夫氏が脚本を書かれた話に登場しているという共通点もあります。

アキラが登場する『恐怖のルート87』が放映されたのは1966年11月27日、真市が登場する『ノンマルトの使者』が放映されたのは1968年7月21日です。

ですから、『ノンマルトの使者』に登場する真市の原型となったのが『恐怖のルート87』に登場するアキラだったと考えていいのではないでしょうか。

後味が悪い『ノンマルトの使者』と後味が良い『恐怖のルート87』

『恐怖のルート87』では、ウルトラマンはスペシウム光線を放つのをやめてヒドラを倒しませんでした。アキラの魂がヒドラに乗っているのが、ウルトラマンにはわかったためです。

そして、アキラをひき逃げしたトラックの運転手が自首したことによってアキラは天国に行けたとされていました。

ただ……ヒドラに襲われ犠牲となった罪なきトラック運転手たちの霊・魂はどうなるのかとか思わずにはいられません。

また、アキラの魂がヒドラと一体化し、国道87号を走るトラックを襲っていたのだとしたら……なぜ、そのアキラが科学特捜隊本部に「大室公園の高原竜ヒドラが暴れるよ」「早くしないと大変なことになるよ」と警告をしに現れたのかが疑問にも思えます。

とはいえ、ヒドラはウルトラマンや科学特捜隊に殺されずにアキラも天国に行けたと思われるかたちで物語が終わる『恐怖のルート87』には『ノンマルトの使者』のような後味の悪さはありません。

地球の先住民の可能性があるノンマルトの海底都市をウルトラ警備隊が全滅させ、ダンとアンヌが「ウルトラ警備隊の馬鹿野郎」と真市に怒鳴られ、しかも、その真市が2年前に海で死んだ少年だったということがわかってエンディングを迎える『ノンマルトの使者』は、なんとも後味が悪いですからね。

ただ、その後味の悪さが、いつまでも忘れられない余韻となり、『ノンマルトの使者』を傑作たらしめている事も間違いありません。

『恐怖のルート87』も良い作品ですが、物語の深度やインパクトの強さでは『ノンマルトの使者』の方が圧倒的に上回っているのではないでしょうか。

だからこそ、『恐怖のルート87』は『ノンマルトの使者』の原型……つまり『ノンマルトの使者』は『恐怖のルート87』の発展形・進化形なのではないかと考えるわけです。

【2018年1月20日】

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●各話研究『第42話 ノンマルトの使者』

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