市川森一氏脚本回の『ウルトラセブン』に必ずあった”裏切り”

V3から来た男
V3から来た男

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『ウルトラセブン』で市川森一氏が脚本を書かれた回に潜んでいた”裏切り”とは…

2011年に亡くなられた脚本家・市川森一氏が『ウルトラセブン』で脚本を担当された回は『V3から来た男』『北へ還れ!』『ひとりぼっちの地球人』『月世界の戦慄』『盗まれたウルトラ・アイ』『恐怖の超猿人』『ダン対セブンの決闘』です。(※『恐怖の超猿人』と『ダン対セブンの決闘』は上原正三氏と恊作)

興味深いのは、この全ての回に何らかの”裏切り”が描かれていたことです。この各話に潜んでいた”裏切り”とは何かを挙げていってみますと

●第13話『V3から来た男』

アイロス星人は固形燃料を渡しても約束を破り、フルハシとアマギを返そうとはしない


●第24話『北へ還れ!』

ウルトラホーク3号が操縦不能となったために自爆せざるを得ない状況に追い込まれたフルハシは、常に意のままに操れると信じていた機械に裏切られたと言える

ウインダムを操られてしまったダンは、カナン星人のためとはいえ部下に裏切られるかたちになった


●第29話『ひとりぼっちの地球人』

自分の考案を認め評価してくれた仁羽教授が宇宙人ではあっても侵略者ではないと信じていた一の宮は、仁和教授=プロテ星人にその信頼を裏切られる


●第35話『月世界の戦慄』

部下シラハマへの信頼をザンパ星人に利用されるかたちになったクラタは、部下の姿という虚像=実体なき影に裏切られたとも言える


●第37話『盗まれたウルトラ・アイ』

マヤは自分の星=マゼラン星に裏切られ、ダンは自分の星以外でも生きようとはしなかったマヤに裏切られたとも言える


●第44話『恐怖の超猿人』

真山博士がゴーロン星人にコントロールされていたためではあるが、アンヌは旧知の博士への信頼を実にアッサリと裏切られている


●第46話『ダン対セブンの決闘』

ニセ・ウルトラセブンと戦うことになったダン=ウルトラセブンは自分の姿と力に裏切られたとも言える

そして、ニセ・ウルトラセブンと戦うことになったアギラは自分の主(あるじ)の姿と力に裏切られたとも言える

そしてそして……人類はウルトラセブンに裏切られたことによって絶望を味わされるところだったが、本物のウルトラセブンによって、それは阻止された

となります。

市川森一氏は『帰ってきたウルトラマン』『ウルトラマンA』でも裏切りを描いていた

市川森一氏が脚本を書かれた回に何らかの”裏切り”が潜んでいたのは『ウルトラセブン』だけではありません。

『帰ってきたウルトラマン』の第31話『悪魔と天使の間に』では、天使のような少女=MAT隊長・伊吹の娘・美奈子の良心と善意、そして、その良心と善意からの行いを誇らしく思っていた伊吹の良識が、悪魔のように狡猾なゼラン星人に裏切られ、ウルトラマンは自らの力=ウルトラブレスレットに裏切られます。

そして、『ウルトラマンA』の第52話『明日のエースは君だ!』では悪魔のような敵ヤプールから守るべき弱き者と思われたサイモン星人が、実は守るべき者の姿をした悪魔ヤプールだったという裏切りに北斗星司が遭い、そのために北斗=ウルトラマンエースは地球を去ることになります。

市川森一氏の成長期の体験と作品中に潜む”裏切り”の間に…

ウルトラシリーズで市川森一氏の描かれた回に必ず何らかの”裏切り”が潜んでいた理由を私ごときが勝手に決めつけようとは思いません。

市川森一氏の代表作とされるようなドラマの中にも未見のものがいくつかある(『港町純情シネマ』『寂しいのはお前だけじゃない』など)ような私がそんな事をしてはいけないとも思いますからね。

ただ……継母にいじめぬかれ「普通、世間的には最も愛され、守ってもらえる存在から、いちばん不条理にいじめぬかれた」と語っていた(参照『怪獣使いと少年 ウルトラマンと作家たち』切通理作著・宝島社)市川森一氏の体験とウルトラシリーズ各話の中に”裏切り”が潜んでいる事ととが無関係ではないことだけは確かだと思いますが。

【2018年1月2日】

続けて作品世界多角的研究17『ウルトラも宇宙刑事も一人目は銀色で二人目は赤』のページをご覧ください

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